

私たちが会話をするときに、もしも思っていること言いたいことをすべて言葉で表現しなくてはならないという規則があるとしたら、この世はたんとわずらわしいことでしょう。すべてを言葉で表すということは、法律や約款のような文章を作るということです。そういうものでは、勝手に解釈されないように必要なことはすべて言葉にしなくてはならないし、書いてないことは考慮の対象になりません。しかし、それでもときどき法律の解釈が問題になるのをみると、すべてを言葉で明白に言い尽くすのがいかに至難の技かがわかります。私たちの日常の会話では、相手にわかっていることは省略あるいは短縮して言うし、差しさわりのあることは遠回しに言ったりします。さらに、言葉を使わないで目くばせ、ジェスチャーで伝えることもあります。だから聞き手は相手の言葉の表面の意味だけでなく、まわりや前後の状況、相手の顔色や態度にも注意して、相手が何を言いたいのかを突きとめる努力をしなくてはなりません。すぐわかる場合もある反面、なかなかむずかしいこともありますが、この努力なしではコミュニケーションは成り立ちません。
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